今回は『やがて君になる』のスピンオフ小説『やがて君になる 佐伯沙弥香について3』についての感想記事です。
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『やがて君になる 佐伯沙弥香について3』のあらすじ
『だってわたし、今、あなたのことが好きだもの』
それは何年ぶりの『出会い』だっただろうか。大学二年生となった沙弥香を慕う、一つ年下の後輩・枝元陽。
今まで沙弥香が好きになってきた人の誰からも遠いその雰囲気。眩しいくらい積極的に好意を伝えてくる陽に初めは警戒しながらも、やがて彼女からの気持ちに応えるように、沙弥香は恋の形を模索する。
――誰かに恋をする度、星に手を伸ばすようだった。とても綺麗で、ただ届かない。それでも。その星に触れてみたいと、今度こそ。
沙弥香の恋の物語、完結編。引用元: やがて君になる 佐伯沙弥香について(3)
『やがて君になる 佐伯沙弥香について』では沙弥香の小中学生時代が、『やがて君になる 佐伯沙弥香について2』では高校時代が描かれました。
『やがて君になる 佐伯沙弥香について3』は沙弥香が高校を卒業し、大学に入ってからの話となります。
ちなみに沙弥香と今回の相手である枝元陽(えだもとはる)との出会いについては『2』に収録されています。
『やがて君になる 佐伯沙弥香について3』の感想
停泊船
いわゆるプロローグ。陽の感情の移り変わりの早い性格がわかる。
いきなり告白シーンから始まるのは意外だった。
透明の海
陽が沙弥香に告白するに至るまでが語られる。出会った時の涙の意味も判明。
1に出てきた水泳少女もちょっとだけ登場。
抜錨
告白の一応の返事、そして正式に付き合うまで。
まなみど、侑、燈子との現在の関係性も明らかに。
星が揺れる
二人は幸せなキスをして終了。それ以上の欲求も垣間見える。
以下気になった点について
枝元陽の性格
天真爛漫で行動力があるタイプ。裏表のない性格で、『やがて君になる』には今までいなかったキャラクターをしている。強いて言えば愛果が近いか?
フラれた直後に沙弥香に興味を持ち、ポジティブな感情も長続きしない飽きっぽい彼女。客観的に見れば不穏な要素だらけである……
それでも読み進めていくとなんかいけそうな気がしてくる。沙弥香も最初は返事を保留にしつつも、つき合うことにしたのは論理的なものではなく感情とか予感という曖昧なもの。読者もなんとなく感じ取っておくのがちょうど良さそう。その直感はたぶん正しい(はず)。
まなみど、侑、燈子との現在の関係性
愛果とみどりは相変わらず一緒にいるらしい。イメージ通りすぎて草。二人と沙弥香との関係性も今まで通りといったところ。
その一方で侑、燈子とは関係性の変化が見られる。侑とは近く、燈子とは遠くなった。地元に残ってるのが侑くらいという事情もあるが。それにしてもわざわざ家に上がり込んで彼女を紹介するのも凄い関係だ……
燈子とは物理的な距離だけでなく心理的な距離もあった。それでも陽と付き合うことを決めた後は二人で会うこともできるように。
燈子とのじゃんけん
そして二人で会うことになった沙弥香と燈子は喫茶店での支払いを賭けてじゃんけん。じゃんけんの勝敗は不明だがこのシーンはいろんな解釈ができる。
燈子の手を完全に読めてしまう沙弥香にとっては勝つも負けるも自由自在。
個人的には容赦なく沙弥香が勝ってそうに思える。でも昔はもっと真剣に勝ちにいってたんじゃないかな~
どっちにしろ勝つけどそこに至るまでの思考に精神的な余裕がありそう。負けてあげることもできたけど勝っておくわね、みたいな。
まとめ
恋が叶わないことがすでにわかっていた1・2に対し、どういう関係になるかが(本編を読んでいる人には)わかり切っている3。
1・2に比べると『やがて君になる』っぽさが軽減され、入間人間先生らしさが出てるように感じました。普通の百合小説っぽい感じですね。
これで『やがて君になる』に続き『佐伯沙弥香について』も完結。一応コミックアンソロジーはあるものの、公式からの供給は一度ストップする形に。
やが君ロスに負けず頑張っていきたいです。
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