今回は『やがて君になる』のスピンオフ小説『やがて君になる 佐伯沙弥香について』の感想です。
一応ネタバレ注意とは書いておきますが、本編の補完という形である以上ネタバレによるダメージはほとんど無いです。
『やがて君になる 佐伯沙弥香について』のあらすじ
理解でもなく、諦めでもなく、そこにあるのは自分への納得。 ——私は、女の子に恋することしかできないんだって。 幼少時代から大人びていて、どこか達観した少女だった佐伯沙弥香。だが小学五年生の時に友達の女の子から自分へ向けられた感情に、彼女は答えを出せずにいた。 そして中学時代。仲の良かった先輩・千枝から恋心を打ち明けられた彼女は戸惑いながらも告白を受け入れ、次第に恋愛の深みにはまっていくが……。 ままならない想いに揺れ動く少女、佐伯沙弥香の恋を描くもうひとつのガールズストーリー。
中学時代に佐伯沙弥香が女の先輩と交際してフラれているのは本編でも語られている通りです。
その話はアニメだと7話と8話のアバン、原作だと3巻と4巻に収録されています。
2019年の百合展でも少し展示されていましたね。
『やがて君になる 佐伯沙弥香について』はそのエピソードを補完する形となっています。
|
『やがて君になる 佐伯沙弥香について』の感想
『やがて君になる 佐伯沙弥香について』は大きく分けて2つのエピソードで構成されています。
5年3組 佐伯沙弥香
スイミングスクールに通っていた小学生時代の沙弥香と、沙弥香に好意を持っていた女の子の話です。
この女の子は最後まで名前も出てきません。
そしてこの女の子が沙弥香に向けていた感情の正体を沙弥香はよくわかっていませんでした。
それは単純に幼かったということもあるでしょうが、知ることへの恐怖もあったと思います。まあ女の子自身もわかっていなかったのでしょうが。
また、このスイミングスクールでは努力しても勝てない相手がいることも知ってしまいました。
沙弥香の小学生時代の話は本編でほとんど触れられていませんが、今の沙弥香の人格を形成するうえで重要なエピソードだったと思います。
本編の補完という意味での価値は非常に高いです。
友澄女子中学校2-C 佐伯沙弥香
こっちが本編。ページ数は小学生時代の話の倍以上あります。
沙弥香は中学時代に所属していた合唱部の先輩から告白されます。
戸惑いつつ告白を受け入れたものの、どんどん恋愛の深みにハマっていく沙弥香の心情が巧みに描かれています。
ご存知の通り最後は破局してしまうのですが、そこに至るまでの過程は本当に切ないです。
相手の望む自分を作っていくというのはまさに帯の
「こういう私にしたのは、あなたのくせに。」
そして最後は燈子に一目惚れして終わります。これも百合展で展示されていました。
ある意味この小説は柚木先輩の救済にもなっているのかもしれません。原作だけだと凄く印象は悪かったのですが。
というのも実際中学生という年代では自身の性的指向にかかわらず同性に恋をしてしまうことはありがちです。特に男子校・女子校では。
柚木先輩が当時沙弥香のことを好きだったのは間違いないでしょう。
でもそれは誰かと特別な関係を持ちたいという「憧れ」が先にきていただけでした。
そのあたりの人物像は非常によく描かれていると思います。別に沙弥香をもてあそんでやろうという悪意は無かったわけです。
もちろん結果的に沙弥香を傷つけてしまったのは間違いないですが、恋愛ってどうしてもそういう側面はあるので不可避なことでもありますし。
「遊び」とか「気の迷い」という言葉で片づけてしまうのはあれですが、そういう性格なんでしょうね……
まとめ
つらいです。沙弥香が好きだから。
7巻と40話の内容を知っていると特にそう思います。
『やがて君になる』7巻の感想【ネタバレ注意】
この小説は「面白い」という表現はちょっと違う気がします。『やがて君になる』という作品の世界観を広げてくれる小説です。
ライトノベルの形を取っているうえに執筆者が原作者でないことに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、特に違和感はありませんでした。そのあたりはさすが入間人間先生です。
現在電子書籍だと半額セールをやっているので未読の人は連休を使って読んでみて欲しいです。
|
そして5月10日には続編も出ます。
BOOK☆WALKERならやがて君になる 佐伯沙弥香について(2)を試し読みすることも出来ます。もちろん予約も可能です。
また、アニメイトならA6サイズ4Pリーフレットが特典として付きます。
こちらから予約も出来ます。ところで通販だと特典付かないんですかね?一応確認を。
【小説】やがて君になる 佐伯沙弥香について(2)
『やがて君になる』本編もクライマックスに向けて大きく話が動いてきました。
本編だけでなくスピンオフのほうも期待です。
|
コメント
性的指向に関わらず同性に恋するのはありがちと見解されてますが、それはさやかを傷つけた先輩と同じような発言では?
異性愛ならたった一度であってもカウントする。
同性愛ならたった一度なら、子供時代なら、「なかったことにする」。
どうしてですか?
さやかはそのたった一度を大事にしたけど、先輩は大事にできなかった。
それは、同性愛嫌悪と異性愛規範の社会のなかで、大事にする方法がわからなかっただけではと思います。
先輩にとっても「なかったことになってない」から、さやかと再会した際、「さようなら」と言われた後、平常でない表情になってたんだと思います。
大人たちの何気ない一言のせいで、自分の同性への恋愛を「なかったことにしよう」とする子どもが減って欲しいので、コメントしました。以上です。